※Threadsでちょっとした炎上があったので、書いています。
アートメイクアーティストが「MRIは撮影できます」と説明していたお客様が、
いざ医療機関に行ったら断られてしまった、というThreads投稿。
コメント欄にはMRI担当の放射線技師や医師からも多くの声が集まって、
「断らざるを得ない理由がある」という意見が相次いでいた。
これ、施術者として他人事にできないよね。
今回は、アートメイクとMRIに関する2本の論文を整理しながら、
私たちがどう向き合うべきかを一緒に考えてみたいと思う。
⚠️ 注記:本記事はAIによる論文解釈を含んでいます。
内容に誤りが含まれる可能性があるため、必ず原文を直接ご確認ください。

論文①:ラインラント研究(2022年)——アートメイクを含む最大規模の検証
2022年にドイツの医学誌『Frontiers in Neurology』に掲載されたラインラント研究(Rhineland Study)は、
アートメイクを含むMRI安全性研究の中では現時点で最も大規模なもの。
ドイツ在住の30歳以上の住民を対象とした前向きコホート研究で、
最初の参加者5,000人のデータに基づいている。
この研究の特徴は、タトゥーやアートメイクを有する参加者を原則として除外せず、
3テスラ(3T)MRIによる脳撮影を実施した点にある。
3Tとは磁場強度の単位で、一般の臨床現場でよく使われる1.5Tより磁場が強い環境下での安全性を検証した。
5,000人のうち、実際にMRI撮影を受けたのは3,639人(平均年齢54.7歳、女性57.8%)
そのうちタトゥーまたはアートメイクを有していたのは305人(8.4%)
内訳はタトゥー232人、アートメイク85人、両方12人。
アートメイクの部位は眉毛・アイライン・リップなど頭部・顔面周囲が含まれていた。
そして結果は——
有害事象ゼロ件。
アーチファクトによって脳画像の診断価値が損なわれたケースもゼロ。
アートメイクや頭部インプラントを有する参加者には特別な配慮もあった。
撮影前に必ずスカウト画像でアーチファクトを確認し、
全員に「ピリピリ感・熱感・灼熱感が生じる可能性がある」と口頭説明した上で、
異変があればアラームボールを押すよう指示。
アラームボールを押した参加者は一人もいなかった。
📄 Lohner V, et al. Front Neurol. 2022;13:795573.
論文②:「なぜ熱くなるのか」のメカニズム研究(2023年)
2023年にデンマーク・コペンハーゲン大学病院のSerupらが発表した研究。
アートメイク用インク20種を対象に、MRIで熱感・灼熱感が起きるメカニズムを解明しようとしたもの。
問題になる成分は何か。
分析の結果、磁性を持つ鉄酸化物が不純物として混入していることが判明した。
具体的にはマグネタイト(磁鉄鉱・Fe₃O₄)、ゲータイト(Fe(OH)O)、ヘマタイト(Fe₂O₃)の3種で、
なかでも主犯格とされているのがマグネタイト。 
また、XRF(蛍光X線分析)による測定では、鉄が主成分で、微量のチタン、クロム、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、硫黄も検出されている。

なぜ熱くなるのか。
メカニズムとして仮説されているのは、磁性粒子がMRIの磁場によって力を受け、
周囲の神経軸索に電気的刺激が誘発されるというもの。
これが灼熱感・痛みとして感じられると考えられている。 
なお、実際に温度が上昇しているわけではなく、神経への物理的刺激による感覚であることが示唆されている。
これらの磁性不純物は処方に意図的に添加されたものではなく、
顔料の原料(鉱石)に由来する不純物として混入しているものだ。 
つまり、メーカーが意図していなくても混入している可能性があるということ。
📄 Serup J, et al. Skin Res Technol. 2023;29(3):e13281.
じゃあ色素の何を確認すればいいの?
もし色素のMRIリスクを確認したいなら、まず見るべきはSDS(Safety Data Sheet:安全データシート)
SDSには、その製品に含まれる化学成分・含有量・危険有害性情報などが記載されていています。

確認したいポイントは主にこの2つ。
∙ 酸化鉄系成分の有無
∙ 二酸化チタンの有無
製品のCI番号(Colour Index番号)を調べると、主成分の種類を確認できる。
酸化鉄を使う黒色顔料であれば「CI 77499」、赤色酸化鉄なら「CI 77491」、二酸化チタンなら「CI 77891」といった形で識別できる。
ただし、Serupの研究が示すように、磁性不純物が混入する可能性があるため、
SDSに記載がなくても含まれている可能性があるという点は注意が必要です。
2本の論文が示すこと

ラインラント研究は「適切な体制のもとで撮影すれば、アートメイクがあっても有害事象は起きなかった」という実証データを示している。
一方でSerupの研究は、「なぜ稀に問題が起きるのか」のメカニズムを明らかにした。
つまり、エビデンスは「大丈夫なケースが多い」ことと「リスクがゼロではない理由」を同時に示しているのです…
この両方を理解した上で、お客様に説明することが大事。
なぜ病院はアートメイクのMRIを断るのか

施術者の中には、SDSをプリントアウトしてお客様に渡している人もいるみたいです。
その姿勢はすごく大事だと思う。
ただ、Serupの研究が示すように、問題になる磁性不純物は処方外の不純物として混入しているもの。
成分表に記載がなくても混入している可能性があるし、それを病院側がMRI前に確認する時間もない。
他のクリニック等で何度もリタッチを重ねていれば別の色素が混在している可能性もある。
そして、何かあったときに責められるのはアートメイクを入れた美容クリニックではなく、MRIを撮った医療機関です。
成分表の提示は無意味ではないかもしれないけど、それだけで病院の判断を変えるのは難しいというのが現実だと思う。
アートメイクアーティストとして、どうすべきか

私たちにできる一番大事なことは、説明義務をきちんと果たすことだと思う。
∙ 火傷の可能性がゼロではないこと(特にアイライン)
∙ アーチファクトにより画像診断に影響が出る可能性があること
∙ 医療機関によっては撮影を断られるケースがあること
∙ 受診予定の医療機関に事前に確認を取ることを推奨すること
∙ 上記を同意書に明記しておくこと
「最新の研究では有害事象の報告は非常にまれだけど、医療機関によっては撮影を断られることがある。
受診予定があれば事前に病院に確認してね」
という説明をしっかり行うことが、今の私たちにできる誠実な対応じゃないかなと思います。
そして、リスクを理解した上で「それでもやりたい」と選ぶ人には、
ちゃんと向き合って、最善を出す。
それが医療として、アートメイクアーティストとしての責任になると思います。

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